さとりへの道

さとりへの道―上座仏教の瞑想体験

さとりへの道―上座仏教の瞑想体験

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本書は、鈴木一生による、自伝です。
著者の鈴木氏は、日本テーラワーダ仏教協会初代会長を経て、現在はミャンマーで出家、ウ・アローカ比丘として、テーラワーダ仏教の伝道に活躍されています。


お坊さんの自伝、と聞くとなにやら説教臭い、取り澄ましたもののように思われるかもしれませんが、本書はそんなことはありません。
鈴木氏が仏道に興味を持つ前、毎夜飲み歩いたり、とにかくお金を儲けてそのお金で贅沢をして遊ぶことこそ人生だと思っていたことなど、赤裸々な告白に満ちています。


そんな鈴木氏にも転機が訪れ、仏道に関心を持つようになります。


そして、最初は日本の大乗仏教を学ぶものの、しばらくの後壁にぶつかるようになります。

これほどまでに私を惹きつけて放さないお釈迦さまの教えとは、どこにそんな魅力があるのでしょうか。
私は十五年間というもの大乗仏教にしがみついて、こうでもない、ああでもないと取っ組み合いをしてきました。
その結果、大乗仏教はその明確な答えを私に与えてくれなかったのです。
(本書 p.53 より)

そして、会社をしばらく休むことを決意、ミャンマーのマハーシ瞑想道場で比丘として修業する道を選びます。


ミャンマーでの6ヶ月間の修行により、ヴィパッサナー瞑想の素晴らしさを確信した鈴木氏は、帰国後日本テーラワーダ仏教協会を設立、日本におけるテーラワーダ仏教伝道のパイオニアとなります。


現在はマハーシ瞑想道場の修行方法とは異なる系統の、パオ瞑想道場の修行法を研鑽されている鈴木氏ですが、ミャンマーでの修行生活が詳述された本書の価値は、出版から約10年を経た現在でもいささかも減じるものではないでしょう。


パオ瞑想道場での修行体験を記した、続編の刊行が待たれる1冊です。