ダライ・ラマ自伝

ダライ・ラマ自伝 (文春文庫)

ダライ・ラマ自伝 (文春文庫)

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ノーベル平和賞受賞者でもある、ダライ・ラマ14世による自伝です。


北京オリンピック開催にあたり、チベット問題が世界的にクローズアップされる今、ぜひ読んでみたい1冊と言えるでしょう。


本書で、ダライ・ラマ法王はこう語ります、

1990年初め、私はババ・アムテに会い、強烈な印象をうけた。
彼は南インドに村をおこし、かつて荒野だったところに、 緑の木々に囲まれ、バラの咲き乱れる庭園、野菜畑、 小さな病院、老人ホーム、学校、作業場まで作りあげた。
これだけでも大したことなのに、驚くべきことは、 それを作ったのがすべて身体障害者の人たちだということである。
一帯を歩き回りながら、体の不自由さに負けている雰囲気など、どこにも感じられなかった。
とある小舎に入ると、1人の作業員が自転車の車輪を修繕していた。
ハンセン病におかされた手で、たがねと金槌をもち、力いっぱい打ち振るう姿に、私は男の心意気を感じとった。
その自信にあふれた姿から、情熱をもち、ふさわしいやり方で対するなら、重いハンディキャップを背負った人びとも、誇りをもち、社会に役立つ人間として認められるのだということをはっきりと教えられた。
ババ・アムテは非凡な人である。
ある時、ひどい肉体的苦難を背負い、背骨の損傷から、自分も身体障害者になり、まっすぐ立つか、寝転ぶかのどちらかしかできなくなった。
だが彼は、わたしのほうがじっと身体的には恵まれているのに、とても彼のようにはやれないほど精力的であった。
(中略)
わたしの慈悲は言葉ばかりだが、あなたのそれはすべての行動を通して光輝いている、とわたしはいった。
すると、彼はどうして他人のために一生をささげる決意をしたかを物語ってくれた。
ある時、目のない眼窩に、うじ虫がたかっているハンセン病患者を見た。
それが彼の人生を定めたのだ、と。

(本書 p.406より)


仏教という枠組みに囚われず、様々な人たちと交流するダライ・ラマ法王の魅力が伝わってきます。


分厚い本ですが、関心のあるところから気軽に読める本となっています。