怒りの無条件降伏―中部教典『ノコギリのたとえ』を読む

「パーリ仏典を読む」シリーズの第二段です。
今回は、マッジマ・ニカーヤのなかの『ノコギリのたとえ』のコメンタリーとなっています。
現代社会の生活の中では、怒りの感情を持って生活することは当たり前となっています。
ですが、そのような私たちの「常識」は本当に正しいのでしょうか?
釈尊はそんな私たちの「常識」に疑義をつきつけ、その常識を根底から破壊します。
本当のテーラワーダの修行者にとって、怒りの感情を持つことはあってはならないことなのです。
怒りの感情は強烈な刺激でもあります。
普段の私たちの生活はそれに浸りきっていることもあり、怒りの感情を絶つことは極めて困難なことでしょう。
しかし、私たちはそのような困難を乗り越え、怒りを制することを学ばなくてはなりません。
そして、本当の意味で怒りを制することができたとき、私たちは「慈悲」について真の意味で理解できるのではないでしょうか。
本書ではそこにいたるまでの道しるべとして、明快な例えとともに私たちが戒めるべきポイントが語られています。
『慈経』とならび、全テーラワーダ仏教徒必携の書といえるでしょう。