世尊よ、あなたに尋ねます

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本書は、正田 大観氏によるパーリ経典「スッタ・ニパータ」の翻訳と解説です。
中でも第5章にあたる、「彼岸への道」の章に焦点を絞り、解説がされています。


「彼岸への道」はもっとも古い時期に成立したテクストの一つといわれ、ブッダの肉声に近いと言われているものです。
仏道に関心をもつ多くの人にとって、大変興味深い経典であることは間違いないでしょう。
ただ、スッタ・ニパータは大変難しい経典で、スマナサーラ長老も「とても難しいので、未だに講義や説法のテーマにしていない」(『ブッダの道の歩き方』)と発言されているほどです。
経典の本文を読み解くにあたって、親切なガイドとして、本書は心強いものとなるでしょう。


正田氏の訳文の丁寧さは、前著「はじめのブッダ」でスマナサーラ長老も高く評価しているように、信頼のできるものです。
また、解説の部分では、経典編纂者の意図を推測しながらブッダの肉声を抽出しようとする試みがなされており、読者も受身ではなく、正田氏とともにブッダの発言の真意を考察できるような構成になっています。
1回通読して終わり、というのではなく、繰り返し精読するごとに新しい発見のある本と言えるでしょう。


ブッダの肉声に関心のあるかたに、おすすめの1冊です。