偽善入門

偽善入門―浮世をサバイバルする善悪マニュアル

偽善入門―浮世をサバイバルする善悪マニュアル

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前著『「自分」から自由になる沈黙入門』が大好評の小池 龍之介師による新刊です。


今回のテーマはズバリ「偽善」。


ネガティブな印象が強い「偽善」に入門するとはハテこれいかに?と思われるかたが多いと思いますが、これは小池師一流のレトリックで、実際は仏教的道徳の解説書です。


あまりにも厳しい競争社会になってしまった現代日本では、なかなか真正面から道徳を説いても受け入れてもらえません。


「だいたい、そんなお人好しなことしたら、騙されたり、利用されたりして生きていけないんじゃない?」


という感想をもつかたは多いでしょう。


そのような疑問に対し、小池師は本書でたとえ偽善であろうと正しく善行為を実践するならば、必ずや人生がよい方向に展開していくことを明確に説明します。


仏道の実践が実生活においても非常に有効であるという視点は、先日紹介した『ダライ・ラマのビジネス入門』にも通ずる視点です。


http://d.hatena.ne.jp/Huma/20080907


本書やダライ・ラマ法王の本を熟読したかたは、「なるほど、仏教って実践すれば日々の生活でもいろいろ得することがあるんだ」と納得してもらえるかと思います。


それでも、「所詮、お坊さんの言うことでしょ。きれいごとを言っているだけで、自分自身きちんとできていないんじゃないの」という疑いの念を持つかたもいるかもしれません。


しかし、本書の著者である小池師はそのように自分をよく見せようと飾るかたではありません。


包み隠すことなく、自分の失敗についても記しています。

美学や文学や哲学を研究して斜に構えて格好をつけ、美しい生き方をしているつもりになっている自分の現実は自らの奥方に対してどなり、泣き出した彼女に対して「黙れ」と言って殴るような、あまりにも醜いものなのでした。

(本書 p.100より)


仏道では「ありのままの現実に直面する」ことが大変大事なことであるとされます。


このように自分自身を正直に語ることからも、著者が誠実な仏教者であることが伝わってくると思います。


著者自身の手によるイラストも、とてもかわいらしく素敵です。


あまり仏教に関心のないかたにも、おすすめのできる1冊です。